本年度のノーベル化学賞が、カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ博士とマックス・プランク研究所のエマニュエル・シャルパンティエ博士の「CRISPR-Cas9の開発」に対して授与されました。学会を代表して心よりお喜びを申し上げます。お二人の開発したCRISPR-Cas9システムは、効率性、簡便性、低価格(アカデミックの基礎研究のみ)と三拍子揃った革新的なゲノム編集ツールであり、2012年の開発から8年の間に全ての研究者に開かれた技術となりました。CRISPR-Cas9の開発によって、微生物から動物や植物まで、あらゆる生物での遺伝子改変が可能になったことも大きなインパクトです。これにより、様々な産業分野や疾患治療にも利用が進められています。最近ではCRISPR-Cas9に類するシステムを利用したSARS-CoV-2(COVID-19)の検出技術などもニュースとなっています。日本国内においても新しいゲノム編集技術の開発が進み、産業化に向けた研究を加速するフェーズとなっており、今回のお二人の受賞が追い風となるものと期待しています。一方でゲノム編集の安全性や倫理問題について学会として真摯に取り組み、ゲノム編集技術を推進していく所存です。今後とも学会活動に何卒ご協力をお願い申し上げます。
会長 山本 卓