Low immunogenicity of LNP allows repeated administrations of CRISPR-Cas9 mRNA into skeletal muscle in mice.
京都大学 iPS細胞研究所 (CiRA) 講師
堀田 秋津
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療法として、ゲノム編集治療が期待されています。しかしCRISPR-Cas9を生体内の骨格筋組織で広く働かせることが困難であり、薬剤運搬システムの開発が課題でした。一般的にはアデノ随伴ウイルス(AAV)べクターを用いたCRISPR-Cas9の送達が多数論文報告されていますが、中和抗体ができてしまうために繰り返し投与することができません。
この問題を回避するために、我々は武田薬品工業との共同研究T-CiRAプログラムの中で、脂質ナノ粒子(LNP)技術に注目しました。これは、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンとしても使用されている技術になります。我々は武田薬品工業との共同研究で新規脂質を探索し、調製方法を最適化する事で、筋肉組織へ効率よくCas9mRNAとsgRNAを導入可能なLNPを開発することができました。このLNPは筋肉内に繰り返し投与することが可能で、投与を繰り返すほどジストロフィンタンパク質の回復が蓄積することを確認しました。また、脚の付け根を止血して静脈投与する灌流法によって、マウス後脚の複数の骨格筋群に広く行き渡らせたりすることもできました。ウイルス由来タンパク質成分を使用せず、化学合成材料だけで調製できるLNPシステムは、骨格筋疾患の治療に使用する新しい薬剤運搬システムとして期待しています。この研究成果は2021年12月8日にNature Communications誌で報告しましたので、興味のある方は是非、御覧頂ければと思います。
Low immunogenicity of LNP allows repeated administrations of CRISPR-Cas9 mRNA into skeletal muscle in mice
Nat Commun. 2021 Dec 8;12(1):7101.
PMID: 34880218
DOI: 10.1038/s41467-021-26714-w
https://doi.org/10.1038/s41467-021-26714-w