日本ゲノム編集学会は、ゲノム編集に関する国内の研究レベルの底上げと産業分野への展開を目的に設立され、本年6月で4年を迎えました。この間、世界では新しい技術が次々と開発され、CRISPR-Cas9を中心とした技術の重要性は益々高まっています。特に発展技術として、エピゲノム編集、塩基編集やプライムエディティングなどの進展が目覚ましく、開発は次のステージへ進んでいると感じます。国内でも学会メンバーを中心として国産の基盤技術や様々な精密な遺伝子改変技術が開発され、海外技術に対して巻き返しを図っているところです。
そんな矢先、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるい、研究が思うように進められない、先が見えない状況が続いています。本学会の第5回大会(京都大会)も中止を余儀なくされました。本学会の大会は異なる分野の研究者が一堂に集い、新しい開発に向けて刺激を受けることができる重要な場であったため、本年度に開催が出来ないことは大きな痛手ではあります。しかし、このような状況でも研究交流を進めていくことが重要であることは言うまでもありません。そこで学会では、Webシンポジウムによる最新の技術開発動向や知的財産関係の情報提供の場を企画しており、また第6回大会の開催に向けて準備を進めています。ゲノム編集や発展技術を使って新型コロナウイルスの検出や増殖抑制の技術など積極的に開発を進めていく議論も必要かもしれません。
ゲノム編集は急速に発展し、生命科学の分野に革命を起こし続けています。新型コロナウイルスの影響が今後どこまで続くかは分かりませんが、このような混乱した状況下においてもゲノム編集学会は国内研究と産学連携を推進していく所存です。ゲノム編集でのヒト受精卵の研究における倫理問題やゲノム編集作物等の規制の問題の考え方について、研究者による分かりやすい説明が求められ、アカデミアと社会の要求を満たす学会組織として果たす役割も一層増してくるものと考えます。本学会のこのような活動の趣旨をご理解いただき、学会への参加、ご支援を頂きますようお願い申し上げます。
2020年8月
一般社団法人日本ゲノム編集学会
会長 山本 卓
(広島大学大学院統合生命科学研究科 教授)